骨粗鬆症の予防で重要な骨質と骨密度の違いとは

骨粗鬆症の予防で重要な骨質と骨密度の違いとは 骨粗鬆症
骨粗鬆症の予防で重要な骨質と骨密度の違いとは

骨がもろく骨折しやすい状態となる骨粗鬆症には、「骨質」と「骨密度」の2つが関わっています。強い骨をつくるには、この両方に気を使わなければなりません。ここでは、骨粗鬆症予防に欠かせない骨質と骨密度の違いと、どのようにそれぞれを高めるかについて解説します。

骨質と骨密度はどちらも骨の強さの指標

日本で骨粗鬆症の可能性が高い人は1000万人を超えるといわれています。骨は急に鍛えることができないため、骨粗鬆症を予防するには日ごろから強い骨を育て、維持していかなければなりません。
骨の強さを表す言葉として、よく骨密度が取り上げられます。しかし近年、検査で骨密度に問題がなかったにも関わらず、転倒などで骨折してしまうという人が多くみられるのです。
研究の結果、骨の強さには骨密度に加えて、骨質も重要であることがわかってきました。

骨質と骨密度の違いは「量」か「質」か

骨の構造はよく鉄筋コンクリートの建物に例えられます。コンクリートだけの塊というのは意外ともろく、中に鉄骨の骨組みを入れることで強度を生み出しています。建物そのものの「全量」が骨密度、そして鉄筋コンクリートの組成すなわち「質」が骨質に当たります。
したがって、骨密度だけ高くても骨質に問題があれば、骨折を起こしやすい骨粗鬆症の状態になってしまうのです。骨粗鬆症予防には、骨質と骨密度の両方を上げることが大切です。

骨質にはコラーゲンが関係する

鉄筋コンクリートの鉄骨に相当するのが、たんぱく質のひとつコラーゲンです。コラーゲンというと美容の分野でよく聞かれますが、実は骨にとっても重要な物質なのです。しかも、骨に含まれるカルシウムなどのミネラル分とコラーゲンはほぼ同じ体積といわれています。
では、健康食品や美容パックなどに含まれるコラーゲンで大丈夫かというと、それだけでは十分ではありません。骨中のコラーゲンには、分子どうしが規則正しく並んでいる「善玉架橋」と、バラバラになっている「悪玉架橋」という2つの状態があります。前者であればしなやかで強い骨に、反対に後者だと柔軟性に乏しく折れやすい骨になってしまうのです。
このコラーゲン架橋が悪玉化する要因として注目されているのが、ホモシステインというアミノ酸。血中のホモシステイン濃度が上がると、骨量(骨密度)はしっかりしていても折れやすい骨になるといわれており、また代謝の過程で活性酸素が発生して、動脈硬化の原因にもつながります。つまり、骨質を高めるには血中のホモシステインを減らす必要があるのです。
研究によれば、ビタミンB6、B12、および葉酸が不足すると、ホモシステインが増加するとされています。ビタミンB6は、レバーやマグロの赤身、ニンニク、胡麻などに、B12は貝類に多く含まれる栄養素です。葉酸は、海苔やモロヘイヤ、緑茶、枝豆などで摂取できます。ホモシステインを抑えることで、骨粗鬆症だけでなく動脈硬化や心筋梗塞の予防にも効果が期待できます。

骨密度にはカルシウムが関係する

鉄筋コンクリートのコンクリートに相当するのがカルシウムです。カルシウムは牛乳や小魚などで補えますが、比較的体内に吸収されにくい栄養素です。
ビタミンDを合わせて摂取すると、カルシウムが体外に排出されるのを抑制し、吸収率を高めてくれます。ビタミンDはきのこ類や青魚に多く含まれるほか、日光を皮膚に浴びれば自ら生成することが可能です。
また、納豆に含まれることで知られるビタミンKも、骨の代謝や形成を促すとされる栄養素です。特に骨内のコラーゲン生産を促し、骨質を整えてくれるという効果が確認されています。

カルシウムがとれる食材「酢卵」について

体内への吸収率が高くないカルシウムについて、近年話題となっているのが、卵を殻ごと酢につけ数日放置してできる健康食材「酢卵」です。NHKの「あさイチ」やフジテレビの「バイキング」といった情報番組でも紹介されて、注目を集めています。卵の殻が酢に溶け出しているため、牛乳の約3倍という量のカルシウムを含んでいます。
酢が強いのでそのままではきついかもしれません。そのときは牛乳やハチミツで薄めたり、オリーブオイルと塩を加えてドレッシングにしたりするのがおすすめです。

骨を強くするには運動も大切

骨粗鬆症に限らず全ての生活習慣病にいえることですが、健康で丈夫な体を維持するには食事に気を付けるだけでなく、運動も欠かせません。とはいえハードなスポーツを始めたりする必要はなく、1日数十分のウォーキングでも、継続して行えば効果が期待できます。
カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、室内でのガラス越しの日光ではあまり生成されません。まずは外に出て、バスでの通勤区間や車での買い物を徒歩にしてみるだけでも、立派な骨粗鬆症予防になります。日焼けが気になるという女性の場合は、手先や足首だけでも大丈夫です。
また、糖尿病患者は骨質が劣化しやすく、骨折しやすいといわれています。糖尿病予防にも、運動が大切であることはいうまでもありません。適度な運動を続けることは、骨粗鬆症だけでなくあらゆる生活習慣病を相互に抑えることにつながるのです。

まとめ
全国の保健センターや保健所、自治体指定の医療機関では、40・50・55・60・65・70歳の女性を対象とした公的な検査が行われています。骨粗鬆症には医師の指導により治療薬が処方されることもありますが、薬物療法には必ず副作用が伴います。
日々の生活習慣の見直しによって予防や症状の改善ができれば、それに越したことはありません。食事や運動に気を配り、健康な毎日を過ごせるように心掛けましょう。