血糖値とは?変動する要因などを紹介

血糖値
血糖値とは?変動する要因などを紹介

糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの作用が十分に働かず、血液中のブドウ糖が有効活用されないまま高い値が続く病気です。糖尿病を判断する基準となるのが、血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)と呼ばれる数値です。血糖値は、血液中のブドウ糖(血糖)の量を示しています。この血糖値は、日常生活の中でも食事の内容や量、運動やストレスなど、さまざまな要因で変動します。血糖値をコントロールするためには、血糖値がどのような要因で変動するのかを正しく知っておかなければいけません。

血糖値と食事

日常生活の中で最も血糖値に影響を与えるのが食事です。食物中の糖は、まず血液に入ります。何らかのメカニズムでコントロールされない限り、血糖値は大きく変動してしまいます。

インスリンの働き

上がった血糖値を下げるために大きな役割を果たすのが、インスリンというホルモンです。すい臓から分泌されるインスリンの作用で肝臓や筋肉などにブドウ糖が取り込まれることによって、血糖値が下がります。しかし、インスリンを作る力が弱まった場合や、インスリンの効力が弱くなってしまった場合には血糖値が十分に下がらずに、高い状態が続くようになってしまいます。

食事中の注意点

血糖値は食事の量や内容によっても大きく変動しますが、何よりも注意すべきことは、まず朝昼晩規則正しい時間に食事をすることと、時間をかけて食事をすることです。1回の食事には最低でも15分くらいかけるようにしましょう。時間が短いと、血糖値が上がりやすくなるだけでなく、満腹感を得る前に食べすぎてしまう傾向が強くなります。ゆっくりよくかんで食べるには、食物繊維の豊富な野菜やきのこ、海藻などのおかずを積極的に食べると効果的です。
また、同じメニューでも食べる順番を変えるだけでも、血糖値の上昇を抑えることができます。野菜やきのこ、海藻などに含まれる食物繊維には、糖の消化・吸収を遅らせる作用がありますので、食事の最初に食べると効果的です。その後、肉あるいは魚、そしてごはんへと食べ進むのが理想的です。このようにすると血糖値の上昇がゆるやかになります。

たんぱく質、脂質、糖質の三大栄養素の中で、血糖値を最も上昇させやすいのは糖質です。脂質はカロリーが高いので血糖値も上昇させやすいと思われがちですが、実は消化吸収に時間がかかるので、上昇させにくいという特徴があります。このように簡単にできることから改善することでリスクを軽減できます。

血糖値と運動

運動不足は血糖値の上昇を助長させるのに対し、日常生活に運動を上手に取り入れることで血糖値変動を抑えられます。しかし、どのような運動をいつ、どの程度行えばよいのかということはあまり知られていません。
ブドウ糖と脂質の代謝をともにバランスよく改善させるのは、やや汗ばむくらいで、少しきついと感じる程度の運動です。運動の強度には個人差があります。脈拍数を基準にするのがよいでしょう。運動をしながら会話ができるくらいで十分です。有酸素運動を30分以上行うのが効果的です。

また、運動する時間帯によっても効果に差が生じることが明らかになっています。一般的には夕食後の運動が効果的であることが指摘されていますが、最適な時間帯は人によって異なる可能性もあります。一日の中での血糖値の変動を細かく調べることによって、いつ運動をすればよいのかもわかるようになります。

血糖値を上げる要因

日常生活を送る上で避けられないストレスも血糖値変動に影響を与える要因の一つです。ストレスを感じると、アドレナリンやコルチゾールというホルモンが分泌されます。緊張したときに心拍数や血圧が上がるのも、これらの影響です。ストレスは心拍数や血圧に加えて血糖値を上げる作用もあります。ストレスを受ける状態が続いていると、アドレナリンが多量に分泌され続け、血糖値が上昇した状態が続いてしまいます。仕事でストレスを溜めすぎないように注意しましょう。
さらに、ストレスはインスリンに対する感受性を低下させる作用もあります。感受性が低下すると、インスリンが分泌されてもうまく働かなくなってしまいますので、血糖値が下がりにくくなります。これら2つの作用から糖尿病発症のリスクを高めてしまいます。またストレスは暴飲暴食の原因にもなりますので要注意です。

血糖値と喫煙の関係

喫煙は血糖値を上げ、糖尿病の発症リスクを高めます。喫煙が血糖値を上げる直接的な理由は2つあります。1つは交感神経を刺激して血糖を上昇させるのが理由です。もう1つは体内のインスリンの働きを妨げる作用が関係しています。脂肪細胞から分泌される善玉ホルモンの一種であるアディポネクチンは、インスリンの作用を助けて血糖値を下げる役割を果たしています。しかし、喫煙すると数時間でこのアディポネクチンが減少し始め、その後6~12時間は低い値のままになってしまうため、この間はインスリンの作用が低下します。

血糖値と睡眠

睡眠不足も血糖値の変化に影響を与えます。睡眠不足が慢性化すると、体内のホルモン分泌や自律神経機能に大きな影響を与えますので、基礎インスリン分泌機能が低下してしまいます。そのため、血糖値が上昇しやすくなります。最近の研究結果では、睡眠時間が7~8時間の人が最も糖尿病リスクが低いというデータが報告されています。

日常生活の中で血糖値を上げる要因や普段の生活で注意すべきことを紹介しました。近年では、食生活や運動不足だけでなく、喫煙や睡眠不足に伴う肥満化と血糖値上昇のメカニズムも明らかにされつつあります。本格的な治療に関しては専門医に相談してから行いましょう。