厚生労働省では、3年ごとに「患者調査」を行っています。これは、病院や診療所を利用する患者さんが、入院・通院時にどのような状況や病名だったかを明らかにし、患者数を集計して、医療行政の基礎資料とするものです。平成26年に行われた患者調査によると、糖尿病の総患者数(継続して治療を受けていると推定される患者さんの数)は316万6,000人でした。これは、前回の調査よりも46万人以上増えています。
糖尿病とはどのような病気なのか
糖尿病は、聞き慣れた病名ではありますが、具体的にどのような状態をさすのか、はっきり分からない人も多いのではないのでしょうか。
人は食事をとると、血糖値が上がります。特に炭水化物を摂取すると血糖値は高くなりがちです。健康な人の場合は、このとき正常にインスリンというホルモンが分泌されます。このインスリンは、血糖を下げる働きをもつ唯一のホルモンです。しかし、糖尿病にかかると、インスリンの作用が十分でなく、血糖値が高いままの状態が続いてしまうのです。
糖尿病は、その原因によって、いくつかタイプが分かれます。
・1型糖尿病
インスリンを作る膵臓(すいぞう)のβ細胞が、何らかの原因で破壊されて、体内でインスリンを作ることができなくなります。
・2型糖尿病
インスリンの出る量が少なかったり、働きが悪くなったりするために、血糖値が下がらない状態が続きます。
遺伝、過食(特に高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレス、加齢、食事からの亜鉛不足などが原因とされ、生活習慣病といわれることもあります。
この他にも、遺伝子の異常が原因のものや、他の病気や薬に伴って起こる糖尿病、また妊娠に伴って糖尿病と似た症状が起こることもあります。
糖尿病にかかると、どのような症状が出るのか
初期の頃は、糖尿病の自覚症状はほとんどありません。
次のような症状が出ていないか、セルフチェックを行ってみるとよいでしょう。
・以前より太ってきた(初期の症状)
・尿の量が多いと感じる
・すぐに疲れるようになった
・いつも身体がだるいと思う
・いつも喉が渇いている
・1日3食きちんと食べているのに、お腹がすく、体重が減っている
・目がかすんで見にくいことがある
・家族や親戚など、血縁者に糖尿病患者がいる
・味が濃いものや脂っこい食事を好んで食べる
・健康診断で、血糖値が高めだと言われた
糖尿病を予防するための運動
まずは運動について見ていきましょう。
糖尿病を予防しようと思う場合は、少しきついと思う程度の有酸素運動が効果的だと言われています。ここで挙げる有酸素運動には、ウォーキングやジョギングなどの運動や、つま先立ちなどの筋力トレーニングなどが含まれます。有酸素運動を行い、筋肉への血流がよくなり、また筋力トレーニングを行って筋肉が増えると、インスリンの効果が高まり血糖値が下がります。ただし運動をやめてしまうと、数日で効果がなくなってしまいます。少しずつでも毎日続けることが大切です。
運動している最中は、自分の脈拍数を測りながら行うとよいでしょう。脈拍の目安はカルボーネン法による数式がありますので、以下を参考にしてください。
目標心拍数の目安=((220-年齢)-安静時心拍数)×50%+(安静時心拍数)
例)50歳、安静時心拍数70拍の場合
((220-50)-70)×50%+70=120拍/分となります。
59歳以下の方は120拍程度、60歳以上の方は100拍程度が目安です。ただし、個々の病状によって、この数式に当てはまらないこともありますので、主治医の先生に相談しながら行ってください。
できれば毎日運動することが理想ですが、もし難しい場合は毎日少しでも身体を動かす機会を作りましょう。例えば、家の掃除をこまめに行う、エレベーターではなく階段を使う、などです。
糖尿病を予防するための食事
糖尿病を予防するためには、毎日の食事も大きなカギをにぎります。次の事に気をつけて食事をとるようにするとよいでしょう。
・ゆっくりよく噛んで食べる
・3食を規則正しい時間に食べる。いろいろな種類の食品をバランスよく食べる
・腹八分目で抑える
・夜遅い時間に食べない
・炭水化物だけでなく、肉や魚、たくさんの野菜や海藻類もきちんと食べる
・脂質と塩分を控えめにする
・食物繊維をとる
この中で、塩分を控えるという項目は高血圧の人にもあてはまるものです。糖尿病の患者さんは、血圧が高くなりやすく、40~60%の患者さんが糖尿病と高血圧を併発しているといわれています。塩分の多い食事をとり続けていると、ナトリウムの排出がうまく行われず、血液の量が増えてしまい、結果として血圧が上がってしまうのです。
塩分を控える食事というと、「味気がない」「食事がまずくなる」などのイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、糖尿病の改善には、かかせないことです。また心筋梗塞や脳卒中の危険性を上昇させる可能性もあります。食生活を見直して合併症にならないように予防しましょう。